
柊の木
校長 尾 公
私の好きな樹木の一つに柊があります。この木はモクセイ科の喬木(高い木)で、秋になると小さな白色のさわやかな香りの花をつけます。
昔は都市でも、庭木あるいは垣根の木としてよく見掛けたものですが、最近はあまり見られないかも知れません。それでも皆さんは「節分」の折に、各家庭の門や玄関口で飾ったこと、あるいは飾りを見たことがあると思っています。
この行事は柊の葉の縁に鋭い刺があって、そこから「邪気を追い払う」との縁起が生じ、古来からの儀式の一つになっているのでしょう。一方、木質は非常に硬いので、ソロバンの玉や櫛などの細工物の木として使われています。
この様な一見して荒っぽい木を、何故好むのだろうと思われるかも知れませんが、私はこの木からいくつかの教えを受けているのです。以下少し触れてみましょう。
- 常緑樹であるが故に、常にみずみずしく生気を与えてくれ、雪であろうとあられが降ろうと、丈夫の心を見せてくれている。加えて当今いわゆる温暖化防止に役立っている。更にこの緑色は、人の心を和(なご)ます色である。心身の病める人と接し、それを癒すことが天職である皆さんには、常にこの木の様に、「心に緑を」持っていなければならないと思っています。
- 葉の刺に注目して下さい。葉は多角形で、刺を持っている時期は、実は樹齢の若い間なのです。樹齢が増すと刺はいつの間にか消失して、やがて丸みを持ったやさしい葉に変わっていくのです。この驚くべき変わり様は、正しく人の心も年を重ねながらその様になってほしい、いいえそうあらねばならないという事を示唆しているのです。
皆さん、一度は樹齢の増した柊の葉を見て下さい。
- 花についてですが、よく見ないと見落とす位の小さな花で、葉の茂みにそっと隠れています。そのため、木の側を通り過ぎて、「おや!いい香りだ」と振返ることがたびたびあるのです。つまり花に華やかさはなく、地味な生きざまですが、やさしい匂いをもってその佇(たたず)まいを見せてくれているのです。見栄えのないこの種の木であっても、精一杯生きて、すばらしい自然への恩恵を現わしていると感ぜざるを得ません。
私達の一人一人が、この木の様にしっかりと生きていってもらいたいと思っています。皆様に万物の恵があります様に、そして健やかにお過ごし下さるよう祈念致しております。